ちょス飯の映画評

『レオン』  ★★★★★

何度見ても、面白い。レオンは殺し屋だが、その仕事以外は自信なく寂しげに普通に暮らしている。鉢植えの観葉植物を唯一人の友として。レオンに恋するのは、まだ10歳くらいのマチルダ。マチルダ役のナタリー・ポートマンは、その美しさと演技の確かさに驚かされる。なんと賢いこどもなのだろうか。

悪者役の麻薬取締官スタンスフィールド役をゲーリー・オールドマンがやっているが、精神を病んでいる男そのものだ。いかれている。彼こそ、薬患者のようだ。徹底的な悪人。

単純なストーリーであり、中年男に恋する少女の物語だが、最後にレオンもマチルダを愛していることが分かる。切羽詰まった状況で、自分が死んでも愛するものを守りたいとする男。レオンに仕事をくれて、その報酬を預かっていてくれる小さな店の経営者トニーは、イタリアから米国へ渡ってきた人たちの、つながりが強固で信頼できるものだと教えてくれる。マチルダを助けてくれる大人がいる、と安心した。

 

『キネマの天地』  ★★★☆☆

1986年制作。登場人物が若い若い。松坂慶子さんのスマートで美しいこと!亡き渥美清もスクリーンの中では健在だ。1934年頃の松竹蒲田撮影所が舞台。旅役者(渥美)の娘が映画館の売り子から、映画スターになっていくまでを描いている。当時の雰囲気を再現しているのだろうが、物語に起伏がほとんどなく、つまらなかった。

渥美清の演技は、やはり面白く泣かせるので、星3つ。

 

『おとうと』   ★★★★☆

これは、複数の原作を一本の映画脚本にしてある。優秀なきょうだいの中で、劣等感を抱いて育った弟が、姪の結婚式を台無しにしてしまう。姉役は、吉永小百合。弟に笑福亭鶴瓶、姪は蒼井優。姑は加藤治子

世の中には、同じ親から生まれて同じ環境で育っても、能力が違うきょうだいはいるものだ。お金の無心ばかりされていれば絶縁状態になってしまうケースも多いことだろう。だから、いよいよ無一文に成った人が生活保護を申請するとき、親きょうだいが助けないことも多々あるのだろう。

130万円もの大金を、肩代わりさせられても、お姉ちゃんは死にかけている弟の元へ駆け付けた。あまりにも美談だが、弟役の鶴瓶が哀しくて可笑しくて憎めない。

ただ、姪の結婚相手が医者だというのに、セコすぎる設定ですぐ離婚してしまうのはどうかな。もう少し葛藤があっても良かった。

母子家庭で、あまり裕福でもない暮らしをしてきた娘が、医者と結婚するということは、玉の輿だから、ちと気になった。また大学病院に勤務していたということは、薬剤師の免許も持っているということだから、ある程度姪には貯金も余裕もあったはずだ。運転免許を取ることや差し歯代も、彼女自身が結婚前に支払って、しかるべきだ。