ちょス飯の読書日記

『遺言』対談と往復書簡 ★★★★★ 志村ふくみ 石牟礼道子  筑摩書房  2014年発行

2011年3月13日。東日本大震災の直後、志村が石牟礼に宛てて出した手紙から、2013年5月までの往復書簡と対談が収められている。

口絵には、志村が草木で染めた、美しい絹糸の束が虹のように配された木箱。また、石牟礼の筆による巻紙の写真。ため息が出るほど素晴らしい。

ふたりは、自然破壊の進む今の日本、世界情勢を嘆き、命の世界の大切さ、はかなげなさを語り合っている。互いを尊敬しあい、心底理解し合う姿。

石牟礼が「沖宮」を苦心して書いては直し、書いては直し、完成前の原稿を誰にも見せたことがないのに、志村には送っていたという。

石牟礼は、最後の作品となった新作能「沖宮」を完成させるには、登場人物あやのために「緋色」が、天草四郎のために「水縹色」が必要だとして、志村に草木染めを依頼する。ふたりとも、高齢である。体も思うように動かせない状態になっている。

しかし、見事に志村はその依頼に答えたのだった。

年下の石牟礼が、先に妣の国に旅立たれたが、英雄が英雄を知るように、偉大なる女性同士も、同志となれるのだろう。

「ふたりの道行き」というテレビ番組では、映像でおふたりを拝見できた。