ちょス飯の映画評

  ちょス飯の映画評

あと数日で、アマゾンプライムの期限なので、慌てて映画を見た。

 

葛城事件  ★★★★☆  ネタバレ注意

これは、やるせない。池田小、土浦、秋葉原などで無差別殺人事件が起きたが、これらの事件の背景はそれぞれ違う。加害者の凄まじい殺意の元となったのは何だろうか。本人の資質もあるだろう。時代背景も。この物語では、父親が次男にこれをさせたように描かれている。

父親役に、三浦友和。母親役に、南果歩。私は精神を病んでいく妻の演技がすごいと思った。長男役の新井浩文の演技も、素晴らしかった。

 どこにでもいそうな家族。この程度のDV親父は少なくない。どうしたら、殺人事件を止められただろうか。

 死刑制度に反対する若い女性が、次男と獄中結婚し少しでも彼の心に寄り添おうとするが、これは失敗に終わる。リアルだ。

 最後に父親も、思い出のみかんの木で首をくくろうとするが、失敗して食べかけていたうどんをすする。そこは、侘びしくておかしかった。

ただ、次男の鬱積はよくわかったが、それが殺人につながる理由は、わからないままだ。故にマイナス1

 

八日目の蝉  ★★★★★

 原作を読んだので、映画ではどう表現されるのか気になった。童顔の永作博美が、生まれて4ヶ月の赤ちゃんを誘拐する犯人きわこ役。

原作では、実母が境界性人格障害のように描かれていたが映画では、それほど狂っているようには描かれていなかった。実母役は森瑤子

 しかし、一番悪いのは、不倫相手に堕胎させて、「必ず今の妻とは離婚して君と結婚するから」と言いながら、婚姻中の妻の子は産ませている夫だ。田中哲司が、ごく平凡な夫役を演じた。彼は、よくパラノイアの役をやっているので、こういう役もできるのか、と感心する。

 

 きわこが三年もの間、無事に赤ちゃんと暮らせたのは、エンゼルホームという宗教団体のような閉ざされた集団に匿われていたからだが、エンゼルさん役の余貴美子が、霊能力者として恐ろしい迫力だった。ただ、太ったブサイクなおばさんをイメージしていたので、ちょっと驚いた。

 薫と名付けた、こどもをわが子として大切に育てるきわこの姿が、切なくて何度も涙した。

 

原作と違い、現在と過去が工作して描かれているが、すっきりとわかりやすかった。

4歳で実の両親の元に帰ってきたえりなが、新しい環境に馴染めず心を閉ざして生きて来たすがたが、悲しかった。だが、彼女もまた、不倫によって、妻子ある男性の子を宿す。

彼女の心を、少しづゝほぐしていくのは、エンゼルホームで過ごしたマロンさん。誘拐事件の真相を書くルポライターとして近づいて来て、薫が暮らしたエンゼルホームの跡地や4歳まで過ごした小豆島へ誘う。

 

 最後は涙涙涙が あふれてきた。どうしても赤ちゃんを誘拐するという、大罪を犯した方のきわこに共感を持ってしまった。しかし、実母も辛く悲しかったことだろう。

 

 男の身勝手さに対しての、言及や怒りがなく、産む産まないを女性が決めるということが強いメッセージなのかとも思った。

 

ユリゴコロ  ★★☆☆☆

原作を読んでいたので、映画を見てみた。これは、怖い。とくに、リストカットをする女性をリアルに描き、血溜まりまで映し出されたところは、吐きそうになった。

人を殺すことに、「生きる」喜びを感じるサイコパスの女性が主人公。しかし、彼女はやがて愛を知る。

幼い頃、主人公がミルクのみ人形に口からではなく、おしっこの出る穴から哺乳瓶をさして、逆さにして眼からミルクを出させて遊ぶシーンは、恐ろしかった。

ただ、自分を愛して結婚してくれた夫と初めて結ばれるシーンに、オナモミの実がいっぱい湧き出してくるところは、奇妙でグロテスクだったが面白い表現だと思った。

主人公が一番、嫌いなオナモミ。これを、彼女は受け入れられるようになっていく。

 気持ち悪すぎる血だらけのシーンは、もう少し見せない工夫があったほうが良いので、★2つ

 

紙の月   ★★★★★

 角田光代の原作を読んでいたので、映画を見てみた。

主婦だった中年女性、こどもができないので働きに出る。銀行員となって自転車で営業をする。

ただ溜め込むだけの老人達のお金を、若い男に貢ぐために、どんどん掠め取っていく。優しい夫からは愛され、浮気していることなど、微塵も疑われていない。貧しいわけでもないのに。彼女は、どんどん他人の金で贅沢を楽しむようになっていく。

真面目に働いているお局からは、疑いの目を向けられるが、仕事ができていつまでも寿退社しようとしない女子行員は、結局煙たがられ、閑職へと追いやられる。男性優位の職場の現状も描かれていた。

最後、ついに主人公のしてきたことが露見。追求される段になって、彼女は椅子を振り上げて窓ガラスを叩き割り、ハイヒールで全力疾走。タイだろうか、海外に逃亡して警官から身を隠すところで物語は終わった。

彼女は実は、浮気相手の大学生を愛していたわけでもなかった。セフレ程度。彼が、若い女を引っ張り込んでいたのを知って、ショックを受けるが、・・・。彼から、金を無心されていたわけでもなく、主体的に犯行を続けていたのだ。

女性が自分で望んでした犯罪。私も、なんだか彼女を応援したくなってしまった。