ちょス飯の読書日記

常世の花 石牟礼道子』★★☆☆☆若松英輔著 亜紀書房刊 2018.05.22発行

石牟礼道子氏について著者が、書いてきた評論・エッセイを編集したもの。追悼文も巻末にあるが、追悼特集というわけではない。石牟礼氏が亡くなってから、3ヶ月後の発行なので、よくこんなに早く書かれたと驚いたが、読んでみたら過去のものを寄せ集めたものだった。

繰り返し『苦海浄土』の名場面とでも言うべき箇所が書かれているが、何度読んでも感動する。染色家で石牟礼氏と交流の会った志村ふくみ氏の文章を、はからずもこの本で知ったが、なるほど、素晴らしい文章を書く人だ。とくに、「刈安」という草から、「金色」を発色できるという染色家ならではの、言葉が素晴らしい。

「天地の根源より色の命をいただくのが、染色である」とは。『色を奏でる』より引用

 石牟礼氏の死後、私はずっと彼女の小説やエッセイ、彼女への追悼文集などを読み続けている。若松氏の批評はまっとうである。女性的で、感極まる書き方だが、石牟礼氏の他の著作には面白おかしいユーモアも、たくさん散りばめられているので、そこのところも加えてほしかった。故にマイナス3★。