ちょス飯の読書日記
『形見の声』 石牟礼道子著 筑摩書房 1996年発行 ★★★★☆
『春の城』に関する創作メモというエッセイが多く収録されている。
初めに「うすねぎりの塚」という章があり、終わりは表題作「形見の声――母層としての風土」という章である。
他の雑誌に紹介されていたが、うすねぎり、つまり隠れキリシタンの村人を全員、打首にして埋めたという事件があったことは、事実であった。
3万7千人もの農民、漁民、武士たちが討ち死にしたという、天草四郎の乱。石牟礼は現地を訪れて、多くの資料を読みこれを書いた。本当によく書き残してくれたものだとあらためて、感激する。
熊本日日新聞や、月刊金曜日、出版ダイジェストなどに掲載された短編集で、佐渡や与那国島、久高島の「イザイホウ」を観に行ったときの思い出などが書かれている。
石牟礼は原始宗教や無教養の人々に対して、深い尊敬の念を持つ人だった。
216頁 より
日本の風土の魂とはどういう姿であったのか、この近代に向けて聞こえてくる形見の声ちはどういう声音かというのが、私のテーマでございます。