ちょス飯の読書日記

『なみだふるはな』 ★★★★★ 石牟礼道子 藤原新也 

河出書房新社刊 2012年発行

もうすぐ東日本大震災が起きてから8年。福島原発事故から8年が経とうとしているが、汚染された土の置き場や増え続ける汚染水の行き場がない。避難者の家賃援助は打ち切られるという。

この本は、震災後わずか3ヶ月の2011年6月半ばに、石牟礼道子宅に、藤原新也が訪問してふたりが対談した3日間の記録である。巻末には、藤原に撮影された石牟礼のポートレイトといしだまさたか氏撮影の藤原新也のポートレイトがあった。

まだまだ、お元気だった頃の石牟礼の笑顔。福々しく明るい。

しかし、二人が語ったのは、津波被害のことよりやはり、放射能被害について、水俣と福島の共通性についてだった。

国策で辺境の地に、原発を置き、絶対安全だと住民を信じ込ませていたが、・・・事故の収束はまだまだ途中だ。

藤原が、震災後にすぐ福島へ駆けつけ、撮影したり被災地支援をずっと続けてきたことは、知らなかった。無名の市民だけでなく、文化人、有名人が多く被災地の支援を今も続けているのだろう。

ふたりが、こどものころの思い出を語ったり、国の行末を案じたり。石牟礼の話はすべて今まで読んだことばかりだった。

表現することは、ひとさまのためにより、自分のためだったという、石牟礼の言葉、

対談は、藤原の希望で実現したのだという。フクシマに答えはない。しかし、石牟礼は苦海浄土4部も書きたいと言った。水俣は日本から切り離されてしまったのかもしれない。・・・こりゃ独立してもうひとつのこの世ば作れちゅうことじゃなかろなあ」という今は亡き患者の言葉だという。

藤原は、この対談で石牟礼さんの「人間愛」を感じたという。絶望の果にもユーモアと光を彼女は示しているから。