ちょス飯の読書日記

『東京プリズン』★★☆☆☆ 赤坂真理著 河出書房新社 2012年刊

友人が彼女の友人から読んでほしいと贈られ、また私にも読んでほしいと回ってきた。

私に貸してくれたのは、80歳超えの友人。彼女が途中で挫折し、この夏戦禍を思い出して、再度挑戦して読破したと聞いて、これは負けられないと挑戦してみた。

長い長い前振り。著者の自伝のようにも書かれているが、エピソードの一つ一つが時空を超えて行ったり来たりを繰り返し、最後の最後に伏線だったとして回収される。

作者と思しき、女子高校生マリが、留学先のアメリカで日本近現代史と向き合い、第二次世界大戦を裁いた東京裁判で「天皇無罪」とされたからくりを解き明かしている。

前段階が長すぎて、ここまでたどり着けない人は多いだろう。

しかし、非常に恣意的で計算しつくされた展開だったことが、後で分かる。

著者の明快な解析に脱帽する。そのとおりだと思う。

英語力は優れているものの、無知で貧しい、ごく普通の女子高校生が、母によってアメリカの極寒の地に留学させられる。

彼女が進級試験のためのディベートをさせられる。という体裁で、「天皇に戦争責任がある」という側で、論証せよと宿題が出される。

これは、日本人全員が肯定していることだが、ある意味でタブー視され口に出してはいけないとている問題だ。

天皇」とは何か。誰か。どういう人なのか。マリは、不思議なことにピープルの声を聞くようになり、正解を出し始める。

翼の人々は、赤坂氏や出版社を攻撃しなかっただろうか、率直すぎてこれが作品だとはいえ、その論考、セリフに少し心配してしまった。

読んでみて、なるほどと膝を打った。激しく共感したり、そうなのか?と自分の頭でももう一度考えてみたいと思った。

ただ、前振りが長すぎて、もっとコンパクトにできないものかと考えて、マイナス3とした。