癌友

先日サークル活動の後、死神(と心で呼んでいる先輩部員)と、癌友Sに会いに行く。12月から抗癌剤治療を受けるというので、いよいよ最終コーナーを周る時が来たのだ。

しかし、彼女の家の玄関に入ると笑顔笑顔。

テーブルの上には、カボチャのそぼろあんかけと根菜の煮物が待っていた。

 

昼食の準備をしてもらっては申し訳ないからと、chosu-manmaは死神と弁当を食べてから行ったのだが、・・・。

残した分を、屋台の焼きそばを入れるプラケースに入れて、お土産に持たしてくれるのだった。

前回、手土産にした秋海棠は、可愛らしいスケッチになって飾られていた。「まあ、なんて美しい」chosu-manmaはこれを絵葉書にしようと思い、アイパッドで撮影した。

彼女の笑顔も。

死神は会うたびに、定年退職後どこへも出かけないご夫君のために三食つくらねばならないことを、悲憤慷慨していた。憎くてうっとおしくて夫と別れないのは、経済力がないからだという。彼女は毎回会うたびに同じことを繰り返して言う。

そして、同じサークルのyさんが、美人だから先生に贔屓されているというが、これも毎回なのだった。「はあ、そうですか、そうでしたね」とchosu-manma。

しかし、Sはこれから大変な治療を受けるというのに、心は平坦で今までの苦労を話してもらいたいと思っても、「ま、言ってもしようがないから」と微笑むのだった。

Sは、どケチ野郎の旦那と別れて、三人の子をたったひとりで育て上げた。一人暮らしのマンションも退職金で買い、こどもたちの世話にならぬようにと年金で暮らし、ひとりで入院してひとりで帰ってくるのだという。

chosu-manmaには、彼女の苦しみを減らしてあげることはできないし、金品も差し上げる余裕がない。せめて面白話でも聞かせよう。

彼女はよく笑った。死神も、笑うと癌にいいよ、と言って笑った。