ちょス飯の読書日記
『水木しげる漫画大全集 戦記短編集 幽霊艦長他』066 ★★★★★
講談社 2013年刊
再読。
水木氏自身が体験した従軍の記録、日本の軍人の英雄の話、女性に対する性暴力が、未然に防がれた話など、彼独自の視点からの戦記である。
日本の軍隊では、必ず上等兵による二等兵いじめがあった。そして、死ね死ね。死ねばお国のための名誉の戦死だと、命が軽んじられた。小説やドラマ、映画でもよく描かれているが、水木氏の体験談は生々しく、読んでいて辛い。だが、その登場人物の絵があまりにも、面白おかしいので、ユーモアを感じてしまう。
とくに、女性が襲われそうになるが、助かる話、「姑娘」クーニャンが興味深かった。そして、『レーモン河畔』では、美しい美人姉妹が、指一本触れられず無事に解放される。ただ、女性がひとりの男を思って自殺するのは、あまりにも痛々しかった。
よくぞよくぞ、水木しげる先生は、生還されたものだ。本当に彼の生命力、強運、楽天性に、心から感謝したい。
死んでいった仲間のことを描かないでは、いられないと彼は思ったそうだが、私達は彼から聞かされた、戦地の現実を今度は、次の世代に伝えていかねばならない。
彼の漫画を、是非とも読み継いでいこう。
絵の描き方が、年代により変わっている。戦後まもなくの作品は、ひとりで人物も背景も、丁寧に描いていたことだろう。
しかし、金霊がやって来てからは、クオリティが上がり、点々の数も一段と増えた。とといえる。
水木氏の作品解説も、非常に面白い。