ちょス飯の読書日記

沈黙の春』 レーチェル・カーソン著  1962年刊  ★★★★★

 読売新聞の記事でこの本の名前を見つけ、ずっと読もうと思っていて読んでいなかったことを思い出した。挿絵がとても美しくて見ていて楽しいが、書かれていることは、ぞっとすることばかり。しかも、事実が書かれていることに驚愕した。

 

 化学薬品が生態系に及ぼす危険が、各章にエビデンスを用いて詳細に書かれている。発刊当初は化学薬品メーカー、政治家などから批判を受けたらしいが、結局彼女の鳴らした警鐘は、その後の環境保護、小さい生き物から人間まで、その「命を守る」ための取り組みを始めさせた。

 

 ある不快な昆虫、あるいはダニなどを殺すために発明された薬剤、農薬はすぐに効き目がなくなり、より強力なものが必要となる。しかし、いちど撒かれた化学薬品はいつまでも生物の体内、あるいは土壌、そして河川と海に残留してしまう。そして、遺伝子に作用して不妊となったり、奇形の原因となっていく。

 しかし、人間にとって害虫とされるものを減らすには、その生態うぃ研究して天敵を見つけて、生物に淘汰させることが、いちばん安全で安価であるという結論が書かれている。林を守るために、ある種の蟻を増やして放つという例があるが、実際にすでに行われているという。

 

 化学物質が、放射能と同様であるという記述には、震撼とした。また、戦争の兵器として細菌や化学薬品が研究され、その過程でDDTも発明されたのだあった。

つまり、科学とは「人殺し」の研究にほかならないということが、事実であるとあらためて思った。

 石ノ森章太郎先生の『サイボーグ009』に出てくるセリフを思い出す。ブラックゴーストの親玉だったかが、「人の心の中に悪がある限り、われわれは滅びない」

 

 この本を書き上げて二年後、レイチェルは癌で亡くなっている。死を覚悟して急いでいたのだろうか。