ちょス飯の読書日記

三國連太郎、彷徨う魂へ』 宇都宮直子著  ★★★★☆

三國連太郎と30年来の交流のあったノンフィクション作家宇都宮氏が、彼とのおしゃべりを記したエッセイ。

三国は、非常に劇的な人生を歩んだ人だった。彼の思い出話しは、実は創作が多い。数々の女性遍歴があるが、女性にすぐ飽きてしまう彼は「セックスは滑稽だ」とのたまったそうだ。

佐藤浩市の母親とも、長続きしなかった。しかし、晩年彼は息子とその孫息子を非常に愛していた。

自分のしたいことを自由にして生きるということは、周りに配慮せずときには傷つけ、家族を捨てるということにもなる。

ただ、彼は役者になったからには、役者を極めたいと思った。

迫真の演技は、とことん監督ともやりあって納得しなければ生まれないものだった。

 

彼は自分の本当に父を知らないようだったが、実の息子以上に愛し育ててくれた養父がいた。あまりに息子に暴力を振るうので、恐ろしい人だっただろうと思うが、お腹に子を宿した女性を救った人でもあった。

この本で、不足に思うのは、彼の作品の紹介やコメントがないこと。もう少し『飢餓海峡』のときの思い出とか共演者への思いも知りたかった。