ちょス飯のテレビ評
『ゴンゾウ』 ★★★★★
2008年にテレビ朝日水曜日9時から10回にわたり放映された刑事モノドラマが、夕方再放送された。
12年前のドラマだったが、一つの事件が毎回のゲスト・登場人物の人生を語りながらゆっくりじっくり描かれていた。通底するのは、ゴンゾウと呼ばれる備品係の黒木(内野聖陽)が「この世の中に愛はあるのか」という、問いに苦悩する姿だった。
敵役の佐久間係長の、黒木に対する嫉妬心も、最後の最後に語られる。
犯人は、意外な人物だったが、彼の過去が最終回で明かされるのは、推理小説でいうとノックスの違反だが。
宮部みゆきが、ものすごい悪党をよく書いていたが、彼の事情は明かさない。しかし、このドラマでは、明確であった。
夫婦で、毎回展開を推理しながら観ていた。
最後にゴンゾウが犯人に撃たれたとき、ああ、ここで死ぬのか!
と驚いたが、・・・あにはからんや。主人公は死なない。
良かった。
冒頭、ヴァイオリニストの可憐な女性が、いきなり胸を撃たれて死ぬが、最後は彼女の生前の演奏録音を、事件解決後に警察や関係者で一同に会して聴く。
「愛を与えたのに、裏切られてきた」という犯人に、黒木は「この世に愛はある。愛であふれている」と言う。
素晴らしい言葉だ。
★いつつ。
これからも、良いドラマの再放送を願う。若い若い高橋一生の、涙をこらえた眼の演技。自分が構成させようとした男の姉を守ろうとした彼も、素敵だった。今年、銀獅子賞を受賞する『スパイの妻』の夫役に抜擢されている。本物の役者だ。